「え、そこから来る?」の時代へ
医学部の面接試験、とりわけ小グループ討論(GD)やMMI(Multiple Mini Interview)は、年々「リアルな社会問題」を扱う方向へシフトしています。
かつてのような「理想の医師像」「なぜ医師を志望するのか」といった王道テーマだけではありません。
受験生からすると、
「えっ、そこから来るの?」
と思わず面食らうようなテーマが平然と出題されます。
その代表例が、昨年の東京女子医科大学医学部の面接試験(小グループ討論)でしょう。
テーマは「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。
受験生の多くが、一瞬、頭の中で「?」が浮かんだのではないでしょうか。
「医師になりたいのに、なぜカスハラ?」
「接客業の話では?」
そんな違和感を覚えた受験生も少なくなかったはずです。
しかし、ここにこそ、医学部入試の本質があります。
医学部受験において重要なのは、知識量だけではありません。
むしろ、「大学側は何を見ようとしているのか」という題意(出題意図)を読む力こそが、合否を分ける時代になっているのです。
医療現場こそカスハラの最前線
「カスタマーハラスメント」という言葉は、一見すると飲食業やサービス業の問題に見えます。
ですが、実は今の医療現場において、極めて深刻で現実的なテーマです。
近年、「患者=お客様」という意識が強まり、医療従事者への暴言や理不尽な要求が社会問題化しています。
待ち時間への怒り。
診断結果への不満。
SNSへの悪評投稿。
時には怒号、威圧、人格否定にまで発展するケースもあります。
一方で、医療には「不確実性」があります。
どんな名医でも100%救えるわけではない。
努力しても結果が出ないことがある。
患者や家族の不安が、怒りという形で噴出することもあります。
ここで医師には、非常に難しいバランス感覚が求められます。
理不尽な要求には毅然とNOを示す。
しかし、その背景にある患者の不安や孤独には寄り添う。
しかも、医師には原則として診療拒否が難しい「応召義務」があります。
つまり、「強く出ればいい」「優しくすればいい」という単純な話ではありません。
大学側は、このテーマを通じて受験生に問いかけていたのでしょう。
あなたは、感情のぶつかり合いの中で、冷静に人と向き合える人ですか?
ということを。
大学が見ていたのは“正解”ではない
ここで受験生が陥りやすい失敗があります。
それは、
「カスハラは良くないと思います」
で終わってしまうこと。
もちろん、それ自体は間違いではありません。
しかし、それだけでは60分間の討論は成立しません。
大学側が見たいのは、“正論”ではなく思考の深さです。
例えば、
「なぜその患者は怒ってしまったのか?」
という背景まで想像できるか。
認知症。
孤立。
説明不足。
制度疲労。
家族介護の限界。
不安。
恐怖。
……などなど。
医療現場では、怒鳴っている人が必ずしも“悪人”とは限りません。
そして逆に、「患者だから何でも許される」というわけでもない。
では、どこに線を引くべきか。
どうすれば組織として医療者を守れるのか。
防犯カメラ。
複数人対応。
ルール整備。
言葉のかけ方の改善。
討論の中で、こうした現実的な視点を持ちながら、他者と協調し議論を進められるか。
大学側は、その「過程」を見ているのです。
医学部入試において、「正解を言えたか」は、実はそこまで重要ではありません。
どの角度から考えたか。
他者とどう対話したか。
そこが見られています。
「若者の離職率」に隠れた本音
さらに興味深いのは、東京女子医科大学の2題目でした。
テーマは、
「若者の離職率」。
アルバイトが長続きしないAさんと友人Bさんの会話をもとに議論する形式だったそうです。
退職代行サービス「モームリ」を連想した受験生も多かったでしょう。
これも一見すると、医学部受験とは無関係に見えます。
ですが、大学側の視点に立つと景色が変わります。
医師になれば、将来的に受験生たちは「辞める側」ではなく、
「辞められる側」
になります。
看護師。
事務スタッフ。
後輩医師。
研修医。
人が定着しない組織は崩れます。
医療はチーム戦です。
つまり、「なぜ人は辞めるのか?」を考えることは、将来の医療マネジメントに直結するテーマなのです。
ここでも大学が見ていたのは、
「最近の若者は根性がない」
という昭和的なド根性精神論ではありません。
⇒なぜ辞めるのか。
⇒何が追い詰めているのか。
⇒組織側に改善余地はないのか。
⇒どうすれば対話が成立するのか。
こうした構造的な視点や、他者への想像力が問われていたはずです。
医学部入試は「社会の縮図」
「カスハラ」と「若者の離職率」。
一見バラバラに見えるこの2つのテーマですが、共通点があります。
それは、
人間関係の不全
です。
怒りを攻撃でしか表現できない人や、限界を対話ではなく遮断で解決しようとする人、結構たくさんいませんか?
LINE、SNSが発達した現代社会は、リアルでの面と向かった人と人同士の対話が難しくなっています。
だからこそ大学側は、
「あなたは、(本当に/きちんと)他者と向き合える人ですか?」
ということを見ています。
医学部の面接、小論文、MMIで、一見関係なさそうなテーマが出たとき。
ぜひ、立ち止まって考えてみてください。
この大学は、一体何を聞こうとしているのだろう?
と。
そこから、落ち着いて自分の考えを組み立てていけばいいのです。
テーマそのものに振り回される必要はありません。
ああ、どうしよう、あまり知らない!
そう焦る前に、「何を見ようとしているのか」と落ち着いて分析してください。
大学が見ようとしている中心部を外さないこと。
それが医学部入試における本当の実力です。
メディカルウイングの指導
メディカルウイングでは、面接の「答え方テクニック」や、小論文に必要な「知識」だけを教える指導はしていません。
もちろん技術も必要です。
ですが、それ以前に、「大学は受験生の何を見たいのか」という根本から考える指導を行っています。
⇒なぜ、このテーマなのか。
⇒大学は何を知りたいのか。
⇒どんな医療人を求めているのか。
ここを理解すると、面接も、小論文も、MMIも、実は一本の線でつながって見えてきます。
小手先ではない、本質的なところから始める準備。
現に、今年も小論文に関しては、添削回数は超最低限。
中には、一回も添削することなく授業だけで合格した生徒も多数いました。
つまり、
書く技術<考える方向
もちろん、最低限のライティングスキルは必須ですが、どんなに整った文章が書けるようになっても、何を書くか、どの方向性で書くかという根本がズレていると、本末転倒なのです。
正直、「なんだ、この悪文は」と溜息が漏れてしまう文章を書く生徒もいました。
公平に言ってしまえば、全員が、言っちゃ悪いが「文章ヘタ」ですw
でも、それは仕方のないことですよね。
だって、そういう訓練、皆、受けてないですから。
むしろ、中途半端に文章巧いと思っている生徒、ユニークな思考力の持ち主だと自認している生徒の方が、危ういかもしれません。
「通る文章」と「面白い文章」は違います。
「合格する文章」と「感動させる文章」は違います。
残念ながら、人を感動させたり、面白がらせたりする文章が書けるようになるためには、相応の修練が必要ですし、才能で左右されることもあるかもしれません。
しかし、学術論文もそうですが、小論文も、目的は、読む人(採点者)を感動させることでも、唸らせることでもありません。
そこをはき違えてしまうと、スタートの時点から、歪んだ方向に一直線。
だからこそ、まずスタート時点でのマインドセットが重要。
誤解を恐れずに言えば、
大学が書いて欲しいこと、大学が言って欲しいことを、
⇒言う、書く、話す
これに尽きます。
それこそが、医学部受験という高い壁を越えるための、最短距離だと私たちは考えています。
※ちなみに、東京女子医科大学対策の無料相談を行なっておりますので、ご希望の方は、問い合わせフォームからお問い合わせください。