比較は努力ではない
医学部受験は、競争です。
だからこそ、多くの受験生は周囲を見ます。
「あの人は模試で何点だった」
「○○大学の判定はどうだった」
「先生は誰を評価しているのだろう」
「今日は誰が最後まで残っていた」
情報を集めること自体は悪いことではありません。
しかし、その情報が「勉強の材料」ではなく、「感情を揺らす材料」になった瞬間から、成績は伸びにくくなります。
実際、最後まで伸びる生徒ほど、他人にあまり興味がありません。
もちろん、友人が嫌いなのではありません。
ただ、自分が勝負しなければならない相手を知っているのです。
それは隣の席のライバルではありません。
昨日の自分です。
できなかった英語長文。
間違えた数学。
理解が曖昧だった化学。
彼らの視線は、いつもそこへ向いています。
だから、周囲から見ると少し冷たく見えることがあります。
付き合いが悪い。
愛想がない。
ノリが悪い。
そんなふうに見られることもあるでしょう。
しかし、本人は決して人を嫌っているわけではないのです。
ただ、受験が終わるまで、自分の限られた時間とエネルギーをどこへ使うべきかを理解しているだけなのです。
脳のエネルギーは有限
受験勉強で最も貴重なのは、時間ではありません。
集中力です。
人間の脳は、一日に使えるエネルギーが無限ではありません。
「友達が自分より偏差値が高かった」
「先生に褒められていた」
「第一志望を変えるらしい」
「恋愛で悩んでいる」
こうした出来事は、勉強とは関係がないように見えて、実は脳の処理能力を大量に消費します。
嫉妬、焦り、不安、優越感、劣等感。
これらはすべて、人間として自然な感情です。
しかし、その感情を何時間も抱え続けている間、本来なら覚えられたはずの英単語、解けたはずの数学の一問、読み切れたはずの英文は失われています。
勉強は、知識だけではありません。
エネルギーの配分でもあります。
成績が伸びる人は、この配分が非常に上手です。
群れると比較はが始まる
私たちは、予備校で仲間を作ることを全否定しているわけではありません。
受験生活は長く、精神的にも苦しいものです。
励まし合える仲間の存在は大切です。
しかし、「仲間」と「群れる」は違います。
群れができると、必ず比較が始まります。
誰が先生のお気に入りなのか。
誰が一番伸びているのか。
誰がどこの大学を受けるのか。
誰が合格しそうか。
誰が全落ちしそうか。
一見すると受験の話に見えるかもしれませんが、本質的には人間関係の話です。
そして、人間関係は、必ず感情を伴います。
感情そのものは勉強の敵ではありません。
しかし、感情が勉強より前に来た瞬間、順位は下がります。
医学部受験は、最後には一人で試験会場へ行き、一人で問題を解き、一人で合否を受け取ります。
誰も代わりに英語長文を読んではくれません。
誰も代わりに数学を解いてはくれません。
その現実を理解している受験生ほど、必要以上に群れません。
医学部受験は情報戦である
「頑張る」という言葉は便利ですが、それだけでは合格しません。
医学部受験は、情報戦であり、時間配分の戦いであり、優先順位を決めるゲームでもあります。
私たちが保護者面談でよくお話しするのは、「何をやるか」以上に、「何をやらないか」を決める重要性です。
医学部に合格する生徒は、捨てることが上手です。
SNSを見る時間。
必要以上の雑談。
意味のない比較。
他人の進度を気にする習慣。
油断していると、結構やってしまいがちな事柄ばかりですよね?
それらを切り離し、自分の課題だけを積み上げます。
その姿は、ときに「付き合いが悪い」「冷たい」と映るかもしれません。
しかし、医学部受験とは、本来そういう世界です。
将来、医師になれば、多くの場面で感情よりも判断を優先しなければならない瞬間があります。
その意味では、受験勉強そのものが、医師として必要な資質を鍛えているとも言えるでしょう。
メディカルウイングが私語を禁止する理由
ここまで読んでいただくと、当校が休憩時間以外の私語を禁止している理由も、お分かりいただけるかもしれません。
「厳しい予備校だから」ではありません。
受験生の脳のエネルギーを、受験以外のことに使わせたくないからです。
受験生同士が仲良くなること自体は悪いことではありません。
しかし、人は仲良くなればなるほど、勉強以外の話を始めます。
「あの人、模試どうだった?」
「あの子、○○先生ばかり見てるよね。」
「あの人、頭良さそうだけど感じ悪くない?」
最初は何気ない会話です。
ですが、それは勉強ではありません。
人間関係です。
比較です。
評価です。
そして、それらは確実に脳のリソースを奪っていきます。
自習室の「主」は伸びなくなる
これは長年、この業界にいる人なら、おそらく誰もが見てきた光景でしょう。
どこの予備校にも、自習室の「主」のような受験生がいます。
古株。
多浪生。
顔が広い。
誰とでも話す。
後輩の相談にも乗る。
一見すると頼れる存在です。
しかし、不思議なことに、そのタイプは最後の最後で第一志望を逃すことが少なくありません。
もちろん全員ではありません。
しかし、その割合は決して低くありません。
理由は単純です。
受験生ではなく、予備校の住人になってしまうからです。
周囲の人間関係を維持し、相談に乗り、雑談をし、噂話を聞き、時には先生の評価まで始める。
その時間は、すべて勉強から差し引かれます。
本人は頑張っています。
いや、頑張っているつもりなのでしょう。
朝から晩まで予備校にもいます。
でも、勉強時間と「予備校にいる時間」は同じではありません。
ここを履き違えると、努力しているつもりなのに結果が出ない、という最も苦しい状態になります。
今日やるべきことは決まっている
医学部受験は、とてもシンプルです。
今日やるべき問題がある。
終わらなければ明日までに終わらせる。
それを積み重ねる。
結局、それだけです。
友達の偏差値は関係ありません。
誰がどこの大学を受けるかも関係ありません。
「あの人、勉強できそうだけど感じ悪いよね。」
そんな話をしている時間があるなら、英単語を二十個覚えた方がいい。
数学を一問解いた方がいい。
英文を一本読んだ方がいい。
その積み重ねが、一年後の合否になります。
人は人、自分は自分
医学部受験は、集団戦ではありません。
試験会場では、一人で問題を解き、一人で合否を受け取ります。
だから、人は人。
自分は自分。
私たちメディカルウイングが目指しているのは、勉強しやすい環境ではありません。
余計なものをできるだけ排除し、勉強だけに集中できる環境です。
だから休憩時間以外は私語厳禁。
だから必要以上に群れない。
だから他人ではなく、自分を見る。
それは厳しいルールではありません。
合格する受験生の行動を、そのまま仕組みにしただけなのです。