4月。
「絶対に医学部に合格するぞ!」と気合いを入れ、スタートダッシュをかける受験生がたくさんいます。
その意気込みは本当に素晴らしいものです。
けれども、気合いの入れすぎには注意が必要です。
実は、4月に張り切りすぎた受験生ほど、
6月頃――季節の変わり目――に、
気力・やる気・成績のすべてがダウンしてしまうケースが多く見られるのです。
もともと馬力があり、オーバーワークにも徹夜にもびくともしないタイプなら心配ありません。
しかし、多くの受験生は、急激に生活パターンを変えると、2~3ヶ月後に心も体も悲鳴を上げ始めます。
頭痛、吐き気、めまいなどを訴える生徒もいますし、ひどい場合は、塾や予備校の近くまで来たものの道端でへたり込んでしまったり、体調を崩してしまったりすることもあるのです。
生理的覚醒による優勢反応の強化とは?
ここで知っておいてほしい言葉があります。
それが「生理的覚醒による優勢反応の強化」です。
少し難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、要するにこういうことです。
気合いを入れると、そのとき心の中で一番強い感情がより強くなる
たとえば――
- 好きなことに気合いを入れると、ますます好きになる
- 嫌いなことに気合いを入れると、ますます嫌いになる
こんなふうに、気持ちが「増幅」されてしまうのです。
だから、勉強が好きでたまらない人が「やるぞ!」と気合いを入れるのは効果的です。
でも、心のどこかで「勉強なんて面倒だな」と感じている人が気合いを入れてしまうと、逆に「もっとやりたくない」という気持ちが強まってしまうのです。
生理的覚醒とは?
もう少し掘り下げましょう。
「生理的覚醒」とは、緊張や興奮で体が反応している状態を指します。
心拍数が上がったり、血圧が上昇したり、筋肉がこわばったりする現象です。
こうした生理的な変化に、過去の体験に基づく「認知的解釈(意味づけ)」が加わることで、心にも大きな影響を及ぼします。
たとえば、スポーツの試合前に
「絶対に失敗できない」と強く思ってしまうと、
→ 心拍数が上がり、
→ 不安が強まり、
→ 普段ならしないミスをしてしまう。
こういった一連の流れは、すべて「生理的覚醒による優勢反応の強化」の現れです。
気合いは逆効果になることも
「気合いを入れろ!」「やる気を出せ!」
こう言われた経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
でも、うつ病の人に「頑張れ」と言ってはいけないのと同じように、
心が弱っているときに無理に気合いを入れるのは危険です。
逆効果になり、ますます心を追い込んでしまうからです。
受験勉強も同じ。
本心では「やりたくない」「面倒だ」と思っているのに、
無理に気合いを入れれば入れるほど、そのネガティブな感情が強化されてしまうのです。
では、どうすればいいのか?
答えはとてもシンプルです。
気合いを入れずに、とりあえず始める
そう、「とりあえず」です。
- とりあえず机に向かってみる
- とりあえず教科書を開いてみる
- とりあえずペンを持ってみる
気持ちが乗っていなくても大丈夫。
人間、始めてしまえば意外と続くものです。
最初の一歩を小さく、軽くしてあげることが、モチベーションを削らないコツなのです。
気合いを入れるべきタイミング
もちろん、ポジティブな気持ちが優勢なときに気合いを入れるのは効果的です。
例えば――
- 好きな本を読んで楽しい気持ちになった
- 友達と話して前向きな気分になった
- 憧れの大学のパンフレットを見てワクワクした
こんなときに「よし!」と気合いを入れれば、ポジティブな気持ちがさらに強化されます。
大事なのは、自分の心の動きを正直に観察すること。
ネガティブな感情が優勢なときは無理に頑張らない。
ポジティブな感情が優勢なときに力を込める。
それが、自然に自分を前に進める秘訣です。
受験は長期戦、じわじわと燃え続けよう
大学受験は、ガソリンのように一気に燃え上がってすぐに消えるのではなく、
灯油のようにじわじわと燃え続けるタイプが勝ちます。
無理に気合いを入れて自分を追い込まないこと。
小さな「とりあえず」を積み重ねて、気付いたらゴールにたどり着いている。
そんなやり方で、あなたの未来を切り拓いていきましょう!