SGD・PBL時代に求められる力

近年、大学の医学部教育では、SGD(Small Group Discussion)PBL(Problem-Based Learning)といった授業形式が増えています。
つまり「学生主体の学び」が主流になりつつあるということですね。

単なる“講義を聞くだけ”という座学オンリーの学部ではないのが医学部ですが、今後の医学部生には、さらに自ら考え、話し合い、協働して学ぶ姿勢が強く求められます。

SGDとPBL──主体的学びのカタチ

■SGD(Small Group Discussion)とは

SGDは、少人数のグループ(多くは10名以下)で特定のテーマについて議論する学習形式です。

このスタイルでは、自分の意見を論理的に伝える力と同時に、 他人の意見に耳を傾ける力、異なる考えを調整する力が自然と養われていきます。

議論を通じて、協調性やチームワークの重要性も体感できます。

■PBL(Problem-Based Learning)とは

PBLは、医療現場で起こりうる問題(症例など)を出発点に、自分たちで知識を探し、議論しながら解決策を見出していく学習法です。

ここでは“答え”を教わるのではなく、自分で答えを探すことが求められます。

そのため、探究心・論理的思考・批判的思考といった、より深い知的態度が問われるのです。
しかし単独で沈思黙考するのではなく、仲間同士で議論しあいながら、談論風発なシチュエーションが理想です。
広告代理店の制作部や、雑誌編集部の企画会議、企業の新規商品の開発などの会議においては「アイデアフラッシュ」と呼ばれ、どんどん意見を出し合うというスタイルが用いられていますが、出てくる意見を否定せずに真摯に耳を傾け、その出てくる意見の応酬の中から新たな価値や発見を探り出そうという姿勢は大切です。

そこには「オレの意見はすごいだろう」「私のアイデアのセンスいいでしょう?」というような承認欲求のマウント合戦は不要です。大事なのは意見のキャッチボール。そしてその土台となるのは他者の意見を尊重し、真摯に耳を傾けるという傾聴力です。

この傾聴力は医師には欠かせぬ資質であることは言うまでもありません。

医学部面接は「学力試験」ではない

医学部の面接試験は、単なる「知識の確認」ではありません。
重視されているのは、「この人を将来、医師として育てたいか」という大学側の視点です。

面接官は過去に数百人、あるいはそれ以上の受験生を見てきたプロの観察者です。
「私、コミュ力あります!」と言葉でアピールしても、ほんの数分の受け答えで、表情、姿勢、声のトーン、言葉選びからあなたの本質を見抜かれてしまいます。

そして実際のところ「コミュ力あるアピール」を自らしてくる人に限ってコミュ力不足なことが多いです。
そもそもコミュ力は自らアピールする者ではなく、相手が感じるものですからね。

医師に求められる「伝える力・聞く力」

医師の仕事は、診断や処方だけでは終わりません。

  • 患者さんやその家族への説明(インフォームド・コンセント)
  • 看護師や薬剤師、麻酔技師など異なる専門領域の人と一体となったチーム医療
  • 緊急時の冷静な判断と伝達
  • 相手の不安に寄り添う共感的態度

すべてにおいて、高度なコミュニケーション能力が不可欠です。

日々の習慣が、人間力を作る

全ての大学が学科試験の他に小論文と面接試験を課していることからも、医学部受験は「勉強ができれば受かる」だけの試験ではありません。
特に面接がある入試では、日々の立ち居振る舞いが試験本番に現れます

  • 大きな声での挨拶
  • 相手の目を見て、笑顔で話す
  • 丁寧なお辞儀
  • 相手の話をきちんと聞く姿勢

こうした基本的なことを、日常的に実践できているかが合否を分けることもあります。

たとえば塾や予備校に通う受験生は、塾や予備校の講師やスタッフに明るく挨拶できるかどうか。これが日常からできていないと、その人の「空気」や「印象」は面接でも出てしまいます。 さらに、普段から自分と関わる人たちに対して仏頂面・無愛想・挨拶なしを決め込んでいる人は、本番のみ付け焼き刃で「いい人」を演じようとしても、見抜かれてしまうので注意が必要です。

自己表現と協調性

SGDやPBLの現場では、以下のような姿勢が求められます。

  • 自分の意見を持ち、伝える力
  • 他者の意見を理解し、共に考える柔軟性
  • チームで協働し、目的に向かう協調性
  • 問題に対する主体性と、学び続ける意欲

これらの要素はすべて、医師として生きる上での核となるものです。 そしてこれらの「人間力」は、いきなり面接で発揮できるものではなく、 日常生活の中で培っていくものです。

面接対策として、今日からできること

面接のためだけに取り繕うのではなく、日常のなかで少しずつ意識してほしい行動を挙げます。

  • 先生や家族との会話の中で、自分の考えを話す練習をする
  • 相手の目を見て話すことを習慣化する
  • ニュースや社会問題に関心を持ち、自分の意見を持つ
  • 丁寧な挨拶と、表情豊かな返答を心がける
  • ボランティアや部活動など、チームで活動する場を大切にする

これらの行動の積み重ねが、「この人なら大丈夫」と面接官に思わせる力となります。

「学力+人間力」が医学部合格の鍵

SGDやPBLが主流になる現代の医学部では、学ぶ姿勢そのものに人間性が問われています
医学部合格を目指す皆さんには、ぜひ「勉強だけでなく、日常から医師にふさわしい振る舞いを」と伝えたい。

面接試験とは、人間性の試験である。

そう考えて、日常生活の中でも、自らの立ち居振る舞いに少しだけ意識を向けてみてください。

あなたのその小さな変化が、やがて未来の医師像につながるはずです。