「医師になりたい」という意思を示す重要性
医学部受験において、面接や志望理由書で最も大切なのは、「医師になりたい」という意思を明確に示すことです。
なぜなら、大学側は「良い医師を育てたい」「将来、社会に貢献できる医師を輩出したい」と考えているからです。
医学部は医師を育てるための学部であり、医療人としての責任感や使命感を持った学生を選びたいと考えています。
しかし近年、医学部を卒業しても医師にならない学生も一定数存在しています。
たとえば、医師国家試験に合格しながら臨床医にならず、他のキャリアに進む学生がいます。
厚生労働省のデータによれば、医師国家試験合格者の約95.3%は病院や診療所で働きますが、残りの4.7%は医療以外のキャリアを選んでいます。
医学部卒業後に選ばれるキャリアパス
医学部を卒業して医師にならない選択肢は、意外にも多岐にわたります。具体的には以下のようなキャリアがあります。
- 医系技官:厚生労働省などの行政機関で医療政策を担当。公衆衛生や医療制度の企画・運営に携わります。
- 研究職:大学や研究機関で医学研究を行い、新しい治療法の開発や基礎医学の進展に貢献。
- メディカルドクター:製薬会社で新薬の開発、臨床試験の管理、医療情報の提供に従事。
- 産業医:企業で従業員の健康管理を担当。医療の知識を活かして企業の健康経営をサポートします。
- ベンチャー企業経営者:医療系のスタートアップを立ち上げ、IT技術や医療サービスで新たな価値を提供。
- コンサルタント:マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの外資系コンサルティング企業で戦略立案に従事。
実際、東京大学医学部を卒業後、最初は医師として働き、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーで戦略コンサルティングに従事し、最終的には医療系ITサービス会社の代表取締役になった方もいます。また、医学部に在学中から医療以外の企業(IT企業やコンサルティング企業)のインターンに参加し、そのまま内定をもらうケースも増えています。
大学側が求める受験生の意思
このように、医学部卒業後のキャリアは多様化しています。
しかし、大学側の立場で考えると、「医師にならないかもしれない」学生を積極的に合格させたいとは思いません。医学部はあくまで「医師を育てる」ことを目的とした学部であり、将来、医療現場で人々の命を守り、社会に貢献できる医師を育てたいと考えています。
もしも面接で「医師になりたいです!」という意思が感じられない学生、あるいは「医学部を受験しているのだから今のところ医師を目指してはいますが、将来は確実に医師になるかと断言はできませんね」といった曖昧な態度を見せる学生がいた場合、大学側はどう感じるでしょう?
「この学生は本当に医師を目指しているのか?」と疑問を抱くのではないでしょうか。
これは、大学側が「医師を育てる」という使命感を強く持っているからです。
医師は人命を預かる職業であり、その責任は非常に重いものです。
だからこそ、大学は「医師になりたい」「人々を救いたい」「医療で社会に貢献したい」といった強い意思を持った学生を選びたいと考えています。
面接や志望理由書での「医師になる理由」の伝え方
では、どうすれば「医師になりたい」という意思を大学にしっかりと伝えられるでしょうか?
単に「医師になりたいです!」とだけ言うのは不十分です。
医学部の面接で医師になりたいですと言ったところで「そんなの当たり前でしょ? だからあなたは今、医学部を受験しているんだよね?」で終わってしまいます。
大切なのは、医師になった後のその先の未来の話をすること。
「医師になったらこうしたい」「医師としてこう社会に貢献したい」という具体的なビジョンを語ることです。
たとえば:
- 地域医療で高齢者の支えになりたい
- 国際医療の現場で発展途上国の医療を支援したい
- 研究医として新しい治療法を開発し、難病患者を救いたい
- 医療教育に携わり、次世代の医師を育てたい
などなど。
このように、あなたがどのような医師になり、どのように社会に貢献したいかを具体的に語ることが重要です。
地域医療であれば、もし受験する大学が地方の場合は、その大学周辺や大学がある県の医療事情を調べ、その地域の問題点や地域医療の取り組みなどを調べた上で面接に臨むと良いかもしれませんね。
大学側は、こうした「本気度」を感じられる学生を選びたいと考えています。
学力あってこその「医師への思い」
とはいえ、どんなに素晴らしいビジョンを語っても、学力が伴わなければ合格は厳しいのも事実です。まずは学力で一次試験を突破し、そのうえで「あなたが医師になりたい理由」や「あなたが医師としてどのように社会に貢献したいか」を具体的、かつ簡潔に伝えることが、面接を突破するたまに重要なこととなります。
なぜ「簡潔」のほうが良いのか?
そこで面接官とのキャッチボールが生まれるからです。
「もう少し具体的に話してみて」と相手が身を乗り出してきたらチャンスです。面接前に調べたこと、面接のために予習しておいたことをより具体的かつ詳細に話せば良いわけです。
そうすると、面接官も「この生徒は本気で地域のことを考えている(医師になった後の将来のビジョンもしっかり持っている)」と評価してくれるでしょう。
医学部は、多くの人が「医師になりたい」と考える学生が集まる場所です。
もちろん、学力あってのビジョンではありますが、仮に学力試験の1次試験が受かってから慌てて2次試験の面接対策に取り組んだところで、日数がないので付け焼き刃で終わってしまう可能性もあります。
ですので、受験勉強のちょっとした合間で構いませんので、常日頃から地域医療に関して、受験したい大学を取り巻く環境についてなどを調べるのも良いかもしれませんね。良い気分転換になるかもしれませんし。
こうして構築された、あなたの「医師としてのビジョン」をどう伝えるかが、合否を分ける鍵となります。
医学部受験で心に留めておくべきこと
最後にまとめです。繰り返しになりますが、
医学部は「医師を育てる場」であり、大学は医師を目指す学生を選びたいと考えています。
面接や志望理由書では、「医師になりたい」という明確な意思と、「医師としてのビジョン」を具体的に伝えましょう。
学力があることは大前提。
しかしその前に、まずは一次試験を突破し、その上で「医師を目指している」という熱い思いを伝える場を確保することが重要です。
単に「医師になりたい」と伝えるだけでなく、医師免許をとった後は「どのように医師として社会に貢献したいか」というライフプランを明確に語ることが大切です。
あなたはどんな医師になりたいですか?
この問いに、自分自身で納得のいく答えを持ち、その思いをしっかり大学に伝えましょう。