試験より大切なもの

ある医学部の面接で次のような質問が出題されました。

「二次試験の会場に向かう途中、駅のホームでおばあさんが倒れた。この電車に乗らないと試験に間に合わない。どうしますか?」

一見、単純に「助けるかどうか」を問うように見えますが、実は医師としての価値観と現実的な判断力を試す典型的な質問です。

医療の現場では、理想論や感情だけでは動けません。
冷静さと具体的な行動、そして判断の根拠を言葉にできる力が問われます。

まず大切なのは「人命を最優先に考える姿勢」です。

「まずは人命を優先します」と明言したうえで、「駅員や周囲の人に協力を求め、AEDを依頼する」「自分は専門知識がないので無理な処置はせず、できる範囲で協力する」といった現実的な対応を示すことが重要です。

その後、「救護体制が整ったら大学に連絡して事情を説明します」と付け加えれば、行動と責任の両立が伝わります。

NG回答とその理由

面接では、言葉の選び方一つで印象が大きく変わります。

たとえば「助けたいけれど試験に遅れるので駅員に任せて行きます」という答えは、一見冷静に見えても「自分の都合を優先する人」と映ります。

医師という職業は、緊急時に他人の命を自分ごととして考えられるかが常に問われます。
「自分には関係ない」と切り離してしまう姿勢は、共感力の欠如と受け取られてしまうのです。

また、「自分で心臓マッサージをして救急車を呼びます」という答えも注意が必要です。
正義感があるように聞こえても、高校生や受験生が医学的処置を行うのは現実的ではなく、むしろ「冷静さを欠いた判断」と見なされます。

この質問で評価されるのは「勇気」ではなく、「判断力」です。

面接官が見ているのは、結果ではなく「その瞬間にどう考え、どう動いたか」という思考のプロセスなのです。

沈黙を防ぐための準備

とはいえ、まさか「試験優先」「おばあさん無視」と答える受験生はいないでしょう。

しかし、本番では「じゃあどう答えればいいの?」となってしまうかもしれません。
あらかじめこの類の設問に対しての準備をしていないと、頭が真っ白になるかもしれません。

焦って沈黙。
心の中で汗が噴き出す。
そんなふうにはなりたくないですよね?

だからこそ、事前の思考トレーニングが欠かせません。

面接で問われるのは、暗記した「正解」ではなく、自分の中の「軸」です。
医師としての判断基準を自分の言葉で説明できるようにしておくことが、最終的に合格を引き寄せます。

メディカルウイングでは、こうした倫理的判断力や思考力を問う質問にも対応できるよう、小論文・面接指導を徹底的に行っています。

書く力、話す力(パフォーマンス力)ももちろん大事ですが、医学部受験の面接や小論文で最も大切なことは「思考パターン」。
どんなに、雄弁に話せても、どんなに論理的な文章が書けたとしても、その根底にある思考の方向が間違っていれば黄色信号。

想定外の質問にも動じないためにも、医学部が求める思考パターンを知ることがライバルに差をつける有効な対策です。
これがあるか無いかで、本番においては大きな差が生まれます。

「本番対応力」を身につけたい方は、ぜひご相談ください。