近年は「生物選択」の受験生が増えている

ここ数年、医学部受験において「生物を選ぶ」受験生が増加傾向にあるという事実があります。

その背景には、以下のような事情があります。

  • 医学部入学後も、生物に関する学びは続く(=知識が活きる)
  • 生物選択者は、大学の講義への適応がスムーズ
  • 物理選択者の中には、生物の知識ゼロで入学し、苦労するケースがある

実際、最近では**「生物で受験した学生のほうが、入学後の講義についていきやすい」**という話が広まり、選択の判断基準として影響を与えています。

中には、大学によっては留年する医学部生の中に、物理選択だった人が多いという話まで出ており、「入学後を見据えた選択」が注目されているのです。

生物選択のメリット

① 安定した得点源になりやすい

生物は設問ごとが独立しており、1問のミスが他の失点に連鎖しにくいという特徴があります。
また、計算問題が少なく、暗記と理解を押さえれば、得点の安定化が図れます。

② 化学と知識がリンクしている

化学の有機分野や生体分子は、生物と内容が重なっています。
そのため、化学の知識を活かして生物を学べるという効率の良さもメリット。

③ 医学部入学後の学習につながる

基礎医学・解剖学・生理学・分子生物学など、生物の知識が基盤となる講義が多く、アドバンテージになります。
「受験で学んだことが入学後も活きる」数少ない科目です。

生物選択のデメリット

① 暗記量が多い

物理の数倍といわれるほど、覚えるべき知識が膨大です。
単なる丸暗記では対応できず、知識の体系化が必要です。

② 読解・文章表現力が求められる

記述問題が多く、数百字にわたる記述を要求される問題もあります。
読解力・文章力が苦手な人にとっては厳しい場面も。

③ 高得点が取りづらい

安定はするが、「一発逆転」は狙いにくいのが生物の特徴。
ハイレベル校では専門性の高い問題が出題されやすく、対応力も必要です。

一方で「物理」はどうか?

ある物理講師が語った言葉に、非常に印象的なものがあります。

「物理は、学習したことがそのまま点に反映される教科だ」

まさにその通りです。物理は、一度理解してしまえば得点に直結しやすい「合理的な科目」とも言えます。

物理選択のメリット

① 暗記量が少ない

物理は基本的に公式や定理の理解と応用が中心。
暗記が苦手な人にとっては、大きな救いになります。

② 高得点を狙いやすい

理解が深まれば、計算パターンが安定し、得点源になりやすいです。
満点も狙える数少ない理科科目です。

③ 全医学部を受験できる

一部の大学では、生物選択では受験できません(例:金沢大学、名古屋市立大学など)。
物理選択なら、志望校の選択肢が広がります

物理選択のデメリット

① 計算力が求められる

物理は、一つのミスが連鎖して大量失点するリスクがあります。
高度な計算処理能力が要求され、苦手な人には厳しい道になります。

② 丸暗記が通用しない

公式を暗記しても、それを使いこなせなければ意味がありません。
原理の理解と応用力がなければ歯が立たないのが物理の本質です。

③ 入学後に活かせる機会が少ない

残念ながら、物理は医学部のカリキュラムにおいて直接活用する場面は少ないです。
せっかく学んだ知識が、入学後に“忘れ去られてしまう”リスクもあります。

結局、どっちを選べばいいのか?

ここまで見てきた通り、「生物」と「物理」には、それぞれ明確なメリットとデメリットがあります。

大切なのは、自分のタイプと目的に合った選択をすることです。

  • 暗記が得意で、安定した得点を望む → 生物
  • 計算力に自信があり、短期集中型で得点を伸ばしたい → 物理
  • 将来の学習効率を優先したい → 生物
  • 志望校の幅を広げたい → 物理

どちらが正解というわけではなく、“自分にとっての最適解”を見つけることが最も重要です。

最後に:戦略的な科目選択が合格の鍵

「まず受かること」を考えるなら物理は確かに有力です。
しかし、「入学後に困らないこと」を考えるなら生物も魅力的。

医学部受験はゴールではなく、医師としての人生のスタート地点
その一歩をどのように踏み出すか――科目選択からもう、勝負は始まっているのです。

科目選択に迷っている受験生は、信頼できる講師や指導者と相談しながら、自分の強みと将来像をすり合わせて判断していきましょう