医学部定員は「地域枠」で増えた

医学部を目指すうえで、意外と見落とされがちなのが「地域枠選抜」です。

かつて日本では医師数の過剰が懸念され、医学部定員は長らく抑制されてきました。

しかし、少子高齢化や地方の医師不足が深刻化したことを受け、2006年以降に政府が方針を転換。「地域に根差す医師を育てる」ことを目的に地域枠が新設されました。

その結果、医学部の定員は2007年の7,625人から、現在では約9,400人にまで増加。都道府県が大学に「地域枠」や「地元出身枠」の拡充を要請できる仕組みも整い、地域医療を支える人材育成が進んでいます。

「しばり」はチャンス、かもしれない

地域枠入学者には、卒業後に特定地域で勤務したり、外科・救急・産科などの診療科に従事する「しばり」が課される場合があります。

期間はおおむね5〜10年。

こう聞くと不利に思えますが、実際にはメリットも大きいのです。

高度な専門技術を磨くチャンスや、安定したキャリア形成、経済的な支援など、多くの恩恵が得られます。
さらに、地域枠専用の研修制度を設ける大学も多く、在学中から自治体や医師との交流を通じて地域に溶け込む準備ができます。

学費を抑える「修学資金制度」

地域枠と密接に関わるのが「修学資金貸与制度」です。

経済的な理由で進学を諦める人を減らすために、都道府県や大学が学費や生活費を貸与し、卒業後に地域医療に従事すれば返済を免除する仕組みです。

兵庫医科大学では最大4,480万円、東北医科薬科大学では実質学費を400〜800万円に抑えることができます。

制度内容は大学・自治体によって異なり、出身地や勤務年限の制限もあるため、出願前の確認が欠かせません。

地域枠入試は難度が下がる?

地域枠は、総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜のいずれにも設けられていますが、一般枠よりも倍率が低く、科目数も絞られている場合が多いのが特徴です。

たとえば、昭和大学や近畿大学では、一般枠と地域枠で明確に得点差があり、学力試験の難度は下がる傾向にあります。

総合型・推薦型の場合は「専願制」であることが多く、出願条件に評定平均値や出身地域の指定などがありますが、面接や志望理由書、小論文などを通じて「地域医療への理解や熱意」を多面的に評価されます。

面接で差がつく「地域愛」と準備力

地域枠を志すなら、単なる「地元が好きです」では通用しません。

大学側は「入学後に気が変わらないか」を見極めようと必死です。

面接では、その地域の医療事情や地理的背景を具体的に語れるかが重要です。

過去には、白地図に診療所や交通網を自分で書き込み、「自分ならこう医療資源を届けたい」と語った受験生が高く評価された例もあります。

こうした準備ができるかどうかが、合否が大きく左右されます。

漫然と「地域枠が有利そうだから」ではなく、自分の将来像と重ねて対策を練ることが何より重要です。

地域枠を理解することは、医学部合格への近道であり、同時に「医師としての未来」を考える第一歩でもあります。情報を制する者が、医学部を制する。
今は、まさにそんな時代です。