「4当5落」はもう古い! 現代受験生に必要な睡眠時間とは?
その昔、昭和の時代には「4当5落」という言葉がありました。
4時間睡眠の受験生は合格するが、5時間以上睡眠をとる受験生は試験に落ちる。
このようなことが、昭和の時代はまことしやかに言われていたものです。
少子化の現在とは比べ物にならないほど子どもの人口が多かったという時代背景もあります。
昭和の高度経済成長期からバブル崩壊までの時代は、受験における競争が激化しており、「受験地獄」「受験戦争」という言葉もあったほど競争社会だったのです。
この競争社会において「大学進学」は、良い企業への就職、ひいては安定した生活を送るための重要な手段と考えられていました。
もちろん現在でもその考え方は根強いと思われまが、今以上にその考え方は強かったと言えるでしょう。
そのため、多くの学生が熾烈な受験戦争を戦い、難関大学を目指していました。
中には、親から勉強しろしろと言われまくっていた東京の私立上位校を卒業した浪人生が両親を金属バットで殺害した事件すらも起きたほどです。
現在と違い、受験者数が多く、難関大学の合格は狭き門だったこともありますが、行き過ぎた競争社会の歪みとして、この事件は当時の社会を震撼させたものです。
このような時代背景もあり、受験生は睡眠時間を削ってでも勉強するのが当たり前と思われていました。
しかし、現代の脳科学や大脳生理学の研究により、これは全くの間違いであることが証明されています。むしろ、しっかりと睡眠を取ることが合格への近道なのです。
睡眠不足は脳の機能を低下させる
私たちの脳は、睡眠中に記憶の整理や定着を行います。
睡眠が不足すると、このプロセスが阻害され、学習した内容がうまく定着しません。
また、集中力や思考力も低下し、勉強効率が大幅に悪くなります。
さらに、自律神経のバランスが乱れ、免疫力の低下や体調不良を引き起こす原因にもなります。
受験本番で体調を崩せば、どれだけ努力しても本来の力を発揮することはできません。
記憶の定着には深い睡眠が必要
脳科学の研究では、特に深い睡眠(ノンレム睡眠)が記憶の定着に重要であることが分かっています。
深い睡眠中には、海馬(記憶を司る部位)と大脳皮質が活発にやりとりをし、新しい情報を長期記憶として保存します。このプロセスが不足すると、せっかく勉強した内容も記憶に残りにくくなってしまいます。
また、レム睡眠(浅い睡眠の一種)は、創造的な思考や問題解決能力を高める役割を果たします。
数学の応用問題や記述式の答案を作成する際には、単なる暗記だけではなく、柔軟な発想や論理的思考が求められます。レム睡眠をしっかり取ることで、こうした能力が向上します。
睡眠時間と学習効率の関係
では、受験生に必要な睡眠時間はどれくらいなのでしょうか?
一般的には6〜8時間の睡眠が推奨されています。
睡眠時間が6時間を下回ると、認知機能や集中力が著しく低下し、学習効率が落ちることが研究で明らかになっています。
例えば、アメリカのスタンフォード大学の研究によると、睡眠時間が短い学生は試験の成績が有意に低いという結果が出ています。
また、日本でも、東北大学の研究チームが「睡眠時間が長いほど、記憶の定着率が高い」ことを示すデータを発表しています。
夜ふかしは百害あって一利なし
受験生の中には、夜遅くまで勉強することが美徳であるかのように考えている人もいるでしょう。しかし、これは完全に逆効果です。
夜ふかしをすると、体内時計が狂い、朝起きるのがつらくなります。
その結果、日中の授業や模試で集中力が低下し、効率的な学習ができなくなります。さらに、夜ふかしを習慣にすると、自律神経が乱れ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加します。これにより、不安やイライラが増し、メンタル面にも悪影響を及ぼします。
スマホは睡眠の大敵!
夜ふかしの最大の原因の一つにスマホの使用があります。
スマホやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、睡眠を妨げる作用を持っています。ブルーライトは、脳内のメラトニン(睡眠を促すホルモン)の分泌を抑制し、寝つきを悪くするのです。
寝る前にスマホを長時間使用すると、脳が興奮し、深い睡眠が取れなくなります。結果として、翌日の学習効率が大幅に低下してしまいます。受験生は、寝る1時間前にはスマホの使用を控え、リラックスできる環境を整えることを考える必要がありそうですね。
質の高い睡眠を得るために
睡眠の質を高めるためには、以下のポイントを意識しましょう。
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きよう!
寝る前にカフェインを摂取するのを控えよう!
もちろん、コーヒーやエナジードリンクもNG!
寝る前は激しい運動を避けよう!
寝室を暗く静かで涼しい状態にしよう!
昼間に適度な運動をしよう!
(ウォーキングや軽いストレッチが効果的です)
夜はスマホやPCの使用を控える
受験生とご父兄が知っておきたいこと
睡眠は単なる「休息」ではなく、「学習の一部」です。睡眠時間を削って勉強することが合格への近道だと思っている受験生、そして「寝ないで勉強しろ」と指導する教師や親御さんにこそ、この事実を知ってほしいのです。
夜更かしをやめ、規則正しい生活を送ることで、脳は最大限のパフォーマンスを発揮します。無理をして睡眠を削るのではなく、しっかり休息を取ることで、より効率的に学習できるのです。
「睡眠をしっかり取る受験生こそ、最も合格に近い受験生である」——この言葉を忘れず、健康的な受験生活を送りましょう!