AI診断、ロボット手術、IoTによる遠隔医療──
かつてSFの世界にしか存在しなかった光景が、いまや現実となりつつあります。
医学部を志すあなたにとって、「未来の医療」は他人事ではありません。将来はこれら技術に囲まれ、使いこなしながら医療活動をしなければならないからです。
だからこそ、大学側が面接や死亡理由などで問いたいのは、「あなたはその未来で、どのような医師として生きるのか?」という視点です。
未来の世の中、医師としてどうあるべきか
AIが診断をし、手術ロボットが執刀し、センサーが患者の健康を24時間モニタリングする。
こうした第四次産業革命による医療の進化は、たしかに未来を明るく照らす希望です。
しかし同時に、医師に求められる役割もまた、大きく変わろうとしています。
技術は進歩する。
でも、その技術を「使いこなす人間」の側も、進化しなければ意味がありません。
医学部を目指す皆さんが、これからの時代に求められるのは、日々アップデートされる医療知識や技術に柔軟に対応できる力。
新しい知識を学び続け、常に“学び続ける”姿勢と覚悟です。
変わらないものもある──「医療の本質」
しかし、忘れてはいけないことがあります。
それは、どれほど技術が進化しても、「変わらないもの」もまた存在する、ということです。
患者の不安に寄り添う気持ち。
「あなたの声を聞いていますよ」と伝える眼差し。
そして、「自分の言葉で説明し、納得してもらう」力。
これらはAIにもロボットにも、決して代替できることではありません。
「病気」を診るだけではなく、「人」を診る──
それが医療の原点であり、本質です。
技術発展の「光」と「影」
さらに、テクノロジーの進化がもたらすのは、必ずしも「明るい未来」ばかりではありません。
- 医療格差の拡大(高性能な機器が一部の病院にしか導入されない)
- 情報漏洩(個人の医療データが悪用されるリスク)
- 機器の誤作動(ロボットなどの機械のミスで患者が危険に晒される可能性)
テクノロジーが医療を支える一方で、それをどう使い、どう制御し、どうリスクを最小限に抑えるかという視点、「技術を信じきる」のではなく、「技術とともに問い続ける」姿勢が未来の医師には必要です。
未来の医療と社会が直面する課題とは?
医療の未来は、単なる「技術革新」だけでは語れません。
私たちがこれから直面するのは、複雑に絡み合った「社会の課題」です。
- 気候変動や環境破壊による新興感染症の増加
- 少子高齢化による医療従事者不足と、困難な社会保障の持続
- 経済格差による医療へのアクセスの不平等
- 栄養の偏りや生活習慣の変化による非感染症性疾患の増加(高血圧、糖尿病、がんなど)
こうした問題に向き合い、「人々のWell-being(幸福)」を実現していくこと。
それが、未来の医療に求められる姿です。
知識、技術を追求する姿勢も大事ですが、それだけではなく世の中全体を俯瞰的に捉え、その中でどのようなポジションで、どのような医療活動に従事するのか。そのようなことを考えているのか、否かは(もし面接でそのような質問がされた場合は)大きく評価に差が出てくることでしょう。
将来の医師像──自分の言葉で語れるか?
医学部の志望理由書や面接、場合によっては小論文で必ずといっていいほど問われるのが、
「あなたはどんな医師になりたいですか?」
という問いです。
ここで重要なのは、「寄り添える医師になりたい」といった抽象的な答えにとどまらず、
未来の医療のあり方と社会課題を踏まえたうえで、自分のビジョンを“具体的に”語ること。
たとえば──
- 高齢者の暮らしに目を配り、地域に根ざした在宅医療を支える医師
→ 高齢化が進む日本社会で、「人生100年時代」を支える在宅ケアの重要性は増しています。 - 生活習慣病の予防や健康教育を通じ、病気にならない社会をつくる医師
→ 医療は「治す」だけでなく、「未然に防ぐ」方向へとシフトしています。 - AIやデジタル技術を活用しながらも、対話を重視する医師
→ 「AI時代の医師」は、機械にはできない“共感”と“説明”のプロフェッショナルであるべきです。
これらはあくまで一例です。
大切なのは、自分自身が「何を大切にし、何を目指しているか」を、自分自身の言葉で語れることです。
面接官は、未来の医師を探している
面接官が知りたいのは、ただ優等生的な答えではありません。
「この受験生は、未来の医療をどう見ているか?」
「その中で、どんな立ち位置を目指しているのか?」
「人として、どんな価値観を持って医療に携わろうとしているのか?」
つまり、「未来への意志」です。
だからこそ、未来の医療について考え、そこに自分の医師像を重ねることは、受験においても、そして将来の医師人生においても、大きな意味を持ちます。
自らへの問いかけ
AI時代の医療に、あなたはどう向き合いますか?
テクノロジーの進歩を、どう“人のため”に使いますか?
何のために、あなたは医師になりたいのですか?
未来の医療は、未来の医師であるあなたの問いかけから始まります。
「医療をする」という行為の、その本質を、あなた自身の言葉で語ってください。
未来を見据え、自分なりの医師像を描ける受験生は強い。
そして、それこそが医学部合格への一歩です。