毎日、私たちは一見「無駄」と思えるようなことを繰り返しています。
例えば、日々の家事や雑務、思うように進まない勉強。
とくに医学部を目指す受験生の皆さんにとっては、先が見えない不安の中で続ける勉強に、焦りや疑問を感じることもあるかもしれません。
けれども、そうした「無駄に見える時間」こそが、将来のどこかで思いがけないかたちで役立つことがあるのです。
点と点がつながる瞬間
アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、大学時代にカリグラフィーの授業を受けていました。
カリグラフィ (Calligraphy) とは、文字を美しく書くための技術、またはそのように書かれた文字のことを指します。単に文字を伝えるだけでなく、線の太さ、形、配置、余白などを意識し、芸術的な表現として文字を書き表すものです。
カリグラフィは、様々な文化や歴史の中で発展してきました。西洋のゴシック体やローマン体、イスラム圏のアラビア文字、東アジアの漢字やひらがななどが、それぞれ独自の美しいカリグラフィのスタイルを持っています。
彼は大学を中退した後、興味本位でカリグラフィのクラスを聴講していました。
当時は「役に立たない」と思っていたその経験が、のちのMacに搭載された美しいフォント設計に活かされたのだそうです。
また、ビジネスSNS「LinkedIn」の創業者リード・ホフマン氏は、大学で哲学を学んでいました。
その時に育んだ抽象的な思考力は、ビジネスモデルの構築や人間関係の本質を捉える力へとつながり、彼の事業に深い影響を与えたといいます。
何が役に立つかは、その時にはわからない。だからこそ、目の前のことに丁寧に取り組む姿勢が、未来の自分をつくっていくのです。
本を読むことの意味
当校では、小論文や面接対策の一環として、特定の本を読むことをお願いすることがあります。
これらは過去の医学部入試で頻繁に引用された著者の著作物であったり、あるいは特定の大学が好んで出題しているテーマに関連するものです。
実際に私たちは、過去に私たちの指導で合格した大学生たちのレポートや課題からも傾向を調べており、教授たちがどのような考え方や価値観を重視しているかもリサーチしています。
そして面白いことに、ある大学教授が学生に「この本読んでおけ」と勧めた本が、小論文の入試問題に出題されたり、別の大学の医学部が同じ著者の本を引用箇所こそ違えど出題されたこともありました。大学こそ違えど、大学教授(大学の入試問題作成者)の「好み」というものは似ているのではないかということがこの件からも推察されます。
また、偏っているとまでは言いませんが、やはり大学で教職に就く者が手に取る本、読む本、共感する本、学生や受験生に伝えたい内容が書いてある本というのは一定の傾向や、エリアがあることも推測することができます。
であれば、対策は簡単。
「出題者が好む本」の傾向、著者の思考パターンを抑えておくことです。
もちろんこれを知ったところで、直接、入試の点数に反映されるわけではありません。数学、英語、理科の入学試験の点数が5点、10点とアップするわけではない、つまり即効性はありません。しかし、小論文や面接試験の時に生きることが少なくないんですね。
面接官の心に届く答え
もちろん、知っている本、読んだことのある本の内容がそっくりそのまま引用されたり、出題されたという僥倖に巡り合うなんてことは滅多にありません。
ですが、著者の「思考の流れ」や「物事のとらえ方」に触れておくと、小論文や面接で似たテーマが出た際に、その思考パターンを軸に思考を構築しやすくなります。そして、自分なりの言葉でその考え方を応用するためにガイドラインになります。
面接官や採点者にとって、「この受験生は自分と似た価値観を持っているな」「この考え方には共感できるな」と思ってもらえるだけで、印象は大きく変わるものです。点数に反映されることもあるかもしれません。
もちろん、その一時を持ってして、直接合否に直結するとは限りませんが、ボーダーライン上で比較されたときに、プラスの印象を与える材料になる可能性は十分にあります。
教養の蓄積が力になる
医学部入試は英語・数学・理科などの科目の得点を取ることが最優先です。そのために皆さんは日々、不断の努力をされていることでしょう。
ですが、毎日の勉強の合間に少しだけ、将来に役立つ「思考のトレーニング」として、教養書やエッセイを読んでみるのもおすすめです。
息抜きの時間にも、「思考の引き出し」を増やすことはできます。
そして、その小さな積み重ねが、やがて医学部の面接や小論文の場面で、自分の言葉に深みを与えてくれることでしょう。
今この瞬間を大切に
今の努力や経験が、どこでどう活きるのかは、今すぐにはわかりません。
でも、それらが“点”となって、将来どこかで“線”になる可能性は、十分にあるのです。
だからこそ、目の前の一見地味なこと、無駄に見えることにも、意味があると信じて取り組んでみてください。
医学部を目指す道は長く、険しいものかもしれません。
けれども、その一歩一歩を大切に歩んでいる皆さんを、私たちは全力で応援しています。
もし、医学部受験対策で読んでおくと良い本を知りたい方は、無料の受験説明会、あるいは体験授業にお越しになられた方にはお伝えしていますので、お気軽に問い合わせフォームよりお問い合わせくださいね。