小論文対策に時間をかけすぎていませんか?

医学部を目指す受験生や保護者の皆さんにとって、「小論文」というワードはなかなかにプレッシャーを感じさせるものです。

「医学部は特殊だから、専門用語を覚えないといけない」
「医療制度の知識が必要だ」

そういう思い込み、あるいはそのような宣伝・煽り文句を迂闊に信じてしまい「なんとかしなければ!」と焦り、あれこれと情報を集めてしまう真面目な受験生や保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、こと「医学部受験」に関して言えば、実はそこまで構える必要はありません。

小論文で最も大切なこと。
それは「知識の量」ではなく、「構成力」、つまり“説得力ある筋道の立て方”なのです。

学科試験対策が最優先、小論文は“その後”

多くの医学部受験では、小論文の試験は二次試験に設けられています。
一方で一次試験の中心は英語・数学・理科などの学科試験。言うまでもなく、一次試験に通らなければ二次試験の小論文は書くことすらできません(もちろん順天堂のように一次試験に小論文がある大学もありますが)。

それなのに、小論文対策に多くの時間をかけ、主要3教科の勉強時間を削ってしまう受験生も少なくないようです。これは本末転倒です。

小論文の準備に時間を取られ、英数理で得点できなかったら意味がありません。
優先順位を間違えると大変なことになります。

学科試験で高得点、小論文ではスレスレの得点しか取れなかった受験生は合格の可能性はありますが、学科試験では点数が取れなかったが小論文では高得点、そういう受験生は合格はできません。
優先順位は間違えないようにしましょう。

「知識量」より「調理法」! 小論文は“料理”に似ている

メディカルウイングの小論文の指導においてよく使う喩えがあります。

「小論文は料理と同じ。高級食材(専門用語や難解な知識)を用意する前に、冷蔵庫にある残り物(既に持っている基礎知識)で、美味しい料理(説得力ある文章)を作れるかどうかが大事」

小論文のツボがわからないまま闇雲に取り組んでしまう生徒は、つい「立派な材料(知識)」を使いたくなって、知識ばかり詰め込もうとしてしまう。

でも、小論文というのは知識の披露の場ではないんですね。

仮に知識をたくさん使って書いたとしても、それがうまく構成されていなければ評価されません。内容がバラバラ、話題が飛ぶ、説得力がない。そんな状態になってしまっては、どれほど情報を盛り込んでも逆効果なのです。

そして、得てして多くの知識を詰め込んで小論文の試験に臨む生徒ほど、「せっかく覚えた知識なんだから」とついつい多くの文字数を費やして、自分の努力の痕跡を解答用紙にしたためようとします。結果、文字数が増える。そして、バランスを欠いた文章になってしまうのです。

説得力とは、「あたりまえ」と思わせる力

説得力の本質は「理屈を積み上げる」ことではなく、「言われてみれば、そりゃそうだよね」と思わせる“あたりまえ感”にあります。

「説得力がある説明とは、聞いた人が“理屈じゃなくても、これは当然だ”と思えること」

この視点は、医学部小論文にもそのまま当てはまります。評価者(採点官)は、あなたの知識量ではなく、“この受験生は論理的に筋の通った話ができるか”を見ています。

つまり、「立派な言葉を並べた文章」よりも、「自然と納得できるあたりまえの話」が高評価につながるのです。

そして、この能力はとても大事ですし、大学入学以降には必須の能力なのです。
大学に入れば、レポート、論文を山ほど書きます。
そして、医師になったら記録、報告が山のようにあります。
相手に伝わりにくい文章、言葉の人は、大学からも不要人間、医療現場においても不要人間なのです。

わかりやすく、相手に伝える技術。
シンプルながら結構大切なことですし、特に医療においては伝達ミスや誤解は治療に大きな支障をきたしかねません。

よく小論文に必要なのは「論理的思考力」だと言われますが、それを平たくわかりやすく言えば、「自分の考えを分かりやすく(筋の通った)言葉で相手に伝える力」なのです。

そして大学側が見ようとしていることは、まさにそれ。

小論文の試験は「私はこれだけ努力をしてきました、医療用語をたくさん覚えました、評価してください」という受験生の承認欲求を満たす場ではないのです。

じゃあ、いつから小論文対策をすればいいの?

理想的なのは、知識の有無に関わらず「構成力」を養う練習を早期から少しずつ始めておくことです。

知識はあとからでも増やせますが、文章構成のトレーニングは一朝一夕には身につきません。ポイントは以下の通り:

  • すでにある知識で構成を工夫する練習をする
  • 書いた文章に対して第三者からフィードバックをもらう
  • 「短く、論点をしぼって書く」ことを習慣にする

実際、当塾メディカルウイングでは、春から夏にかけては、月に1回・1時間程度の小論文授業を設けていますが、秋以前の時期は、この程度の時間で小論文対策は十分です。
この時期はまだ志望大学も決まっていない生徒も少なくありません。実践的かつ各大学に向けた対策は、志望大学が固まってからでも遅くはありません。逆に志望理由が固まっていない段階で、順天堂型、杏林型、国際医療福祉型、東海型、帝京型、獨協医科型、女子医科型など、各大学ごとに異なる小論文の対策をするだけ時間の無駄。受験する予定のない大学の小論文の対策をされたところで、生徒からしてみれば「なぜ受験する予定のない大学の勉強をしなければいけないの?⇒時間のムダ」となってしまいます。

なにより、春から夏にかけては、他の教科の基礎学力を身につけ、定着させるべき重要な時期です。小論文に投下する時間、そしてその時間内にやるべきことは、各大学ごとの傾向や対策を知ることではありません。どの大学にも通用する小論文における基本的な「型」を理解してもらうべき時期なのです。
(もちろん、そのテキストとして各大学の良問と思われる過去問をテキストとして使用することもありますが、それはあくまで「型」を身につけるための手段としてなので、大学対策として使用しているわけではありません)

駆け込み対策でも間に合うことが多い

今年の2月から3月にかけて、メディカルウイングには「一次試験に通ったけど、二次の小論文が全く手つかず!」という受験生が慌てて相談に来ました。

その生徒の多くが、「知識がないとダメだと思っていた」「用語集を買って焦って覚えていた」というタイプの生徒が少なくありませんでしが。しかし、医療用語は短い期間にどんなに詰め込んだところで限界があります。短い時間でやるべきことは暗記ではありません。「型」を習得することです。

ですので、慌てて「二次試験・小論対策」にやってきた受験生には、2時間、多くても4時間、体験授業として個別指導ブースで指導をしてのですが、ほぼ全員合格でした。
2時間の時間の中で教えられることは限られています。
だから、まずは受験する大学の小論文の問題の「ツボ」を理解してもらい、それに伴った構成の基本を伝授したのですが、たったそれだけでも、実際にほとんどの受験生から合格の報告がありました。

そう、大切なのは「採点者が何を見ているか」を知り、それに合わせた文章を書けること。それだけです。
間違った方向に向かってどんなに労力を割いても、それは富士山を目指して青森県に向かって自転車を漕いでいるようなものなのです。

医学部小論文に「オリジナリティ」は不要?

文系学部では、受験生の個性や意見の独自性が評価されることもあります。
オリジナリティが見られる。
そのためには、その前提となる知識量がある程度は必要。
そして、普段、物事を深く考えているか視ているかなどを見られることが多いです。

しかし医学部では違います。

医学部の小論文において求められるのは、奇抜な意見や斬新な視点よりも、「社会に求められる医師像」に沿った、納得性のある意見のほうが高評価されるのです。

だからこそ、ユニークすぎる「オリジナリティ」はむしろ邪魔になることも。ユニークすぎて面倒な学生は大学には不要なのです。むしろ杓子定規なくらいが丁度良い。

だから、採点者が「分かりやすく、評価しやすい」と思える内容、そして分かりやすい構成を意識しましょう。

「少ない力で最大の成果を得る」それが小論文のコツ

英単語や数学・化学の公式に比べれば、小論文で覚えるべき用語や知識量は100分の1、いや1000分の1以下かもしれません。

必要なのは、

  • 型(文章構成)
  • 主張・理由・事例のセット
  • 説得力=“あたりまえ感”

この3つだけ。つまり、少ない労力で成果が出せるパートなのです。
だったら、時間のかかる理科や数学に時間を多く割いた方が合格に近づける。これは合理的な戦略だと思いませんか?

小論文対策に悩んだら、まずは“方向”を見直そう

うまく書けない、時間がかかる……という人は、「着眼点」がズレているだけかもしれません。

説明が複雑になるのは「真実を捉えていないから」。つまり、「何を」「どう書くか」の“入り口”が間違っているのです。いきなり文章を書き始めるのはNG。
何を言いたいのか。一言に集約できるくらい主張内容を固めてから取り掛かるべきでしょう。

そして主張の方向性が固まったら、次はそれをどういう筋立ててで説得力を持たせるのか。

説得力を持たせるのは構成、つまり「型」です。
メディカルウイングで教える「型」は非常にシンプルです。

しかし、シンプルだからといって「頭で理解」と、「実際に使いこなす」は雲泥の差。
やはり、理解しているつもりでも、最初は多くの生徒はおかしな文章を書いてくるものです。

だからこそ、そんな時こその指導者の存在なんですね。
文章構成の方向性を修正し、「採点者に伝わる型」に乗せるお手伝いを私たちはしています。

最後に:大切なのは優先順位

今、これを書いているのは6月の上旬ですが、この時期、医学部を目指すあなたに伝えたいこと。
⇒小論文よりも学科試験の点数を1点でも上げる努力に注力しなさい!

小論文は、焦って手をつけるよりも、計画的に“構成力”をベースに組み立てた方が確実に伸びます。
知識や医療ワードは“味付け”程度で十分。土台がしっかりしていれば、合格は見えてきます。

そしてその土台作りは、今の段階は月に1時間程度の講義を受けて概論を吸収できれば十分。
夏までに出来るだけ学力を伸ばし、秋に入って志望校が固まり、具体的な対策に取り組むべき時期になってから、受験する大学に合わせた対策をしていけば良いのです。

大事なのはメリハリと順番です。

もし迷ったら、いつでもメディカルウイングにご相談ください。