行動が不安を打ち消す
医学部合格を目指す受験生たちを見ていて、よく感じることがあります。
それは「やる前から考えすぎて、手が止まってしまう」ケースがとても多いということです。
「この勉強法、本当に自分に合っているんでしょうか」
「これをやるべきなのはわかってるけど、なぜか気が進まなくて……」
「始めたら最後までやらなきゃって思うと、逆に始められないんです」
気持ちは痛いほどよくわかります。
完璧を求めるあまり、一歩が踏み出せなくなる。
医学部を目指す皆さんのように高い目標を掲げる人ほど、そういう傾向は強く出がちです。
でも、不安があるからこそ、まずは“行動”することが何よりも大切なんです。
ステップ・イン・テクニックのすすめ
心理学には「ステップ・イン・テクニック(Step-in Technique)」という考え方があります。
これは、迷っているときはとにかく“行動を始めること”に意味があるという行動療法の考え方です。
たとえば、いま目の前に英語の長文問題があって、「やる気が出ない」と感じているとしましょう。
そんなときは、「とりあえずこの1問だけやる」「とりあえず1ページだけ読む」と決めて、問題文を1段落だけ読む・設問を1問だけ見るといった“行動のきっかけ”をつくってみてください。
1ページのつもりが、キリが悪いから結局章の最後まで読んでしまった、勢いがついてきたので結局全問やってしまったとい自然に延びていたと、気がつくとほとんどの人が最初に決めた目標を上回った行動をしているはずです。
それこそが、「手を動かすことで心が追いつく」プロセスです。
最初の4分間に勝負をかけろ
もうひとつ、心理学には「ファースト・フォー・ミニッツ(First Four Minutes)」という概念もあります。
これは、「始めるまでが一番しんどい。でも最初の4分を乗り越えれば、人間は続けられる」というものです。
自転車は「漕ぎ出し」が一番ペダルを踏む力がかかる。
飛行機は離陸する時に一番エネルギーを使う。
これと同じ原理ですね。
これは、勉強だけでなく、朝のランニング、読書、日記……どんな行動にも当てはまります。
だから、「やる気が出てからやる」のではなく、「とりあえず4分やる」が正解です。
やってるうちにやる気が出てくる。
やる気スイッチを押してやる気が出るのではなく、行動しているうちに、気づけばやる気になっていた、というものです。
不安は“止まっているとき”に強くなる
不安というのは、止まっているときほど大きくなる性質があります。
じっとしていると、頭の中でネガティブな想像ばかりがふくらんでしまいます。
逆に、手を動かし始めると、不思議とその不安が小さくなっていきます。
人間の脳は、「行動を起こすことで不安を処理しようとする」からです。
ドラマや映画でもこういうやり取りを見たことはありませんか?
上司「奥さんが亡くなって色々大変だろう。無理をしなくていいぞ。今日はもう仕事切り上げて帰れ」
部下「いえ、仕事をしていた方が気がまぎれるので、もう少し頑張ります!」
身内を失う、失恋するなど大きなショックを受けた場合は、何もせずに呆然としているとネガティブなことを考えかねません。それならば、仕事など目の前のことに没頭していた方が、その間だけでも気が紛れることが多いのです。少なくとも、没頭している間は、不安やマイナスな考えに苛まされることはありません。
受験勉強に関しても、それは同様です。
何もしない状態が一番不安に襲われやすいのです。
たとえば、「物理の力学がわからない」と悩んでいるときは、まず紙に図を描いてみる。
「英単語が覚えられない」と焦っているなら、1ページだけ黙って書いてみる。
「模試の復習、やる気が出ない」なら、とりあえず答案を机に広げて赤ペンで日付を書いてみる。
そんな大したことないことをやっても…と思うかもしれませんが、「大したことのない」小さなことでも、動いていることが重要なのです。
最初の一動作を起こした瞬間、頭の中の霧が少し晴れます。
“行動ファースト”の姿勢が、合格力をつくる
結局、合格をつかむ受験生に共通しているのは、「手が止まらない」こと。
調子が悪いときでも、焦っているときでも、“とりあえずやる”という姿勢があるかどうかが、最後に大きな差を生みます。
迷ったら、まず手を動かす。
不安になったら、まず紙を広げて鉛筆を持つ。
「考える前に、動く」。これが、受験生にとっての最強の防御であり、攻撃です。
みなさんがもし今、「勉強が不安」「やる気が出ない」と感じているなら、
このページを閉じたあと、5分でいいから、手を動かしてみてください。
それが、医学部合格への第一歩です。