「夏休みの宿題、最終日になんとか終わらせた」
「レポートが完成したのは提出日の前日」
「文化祭の準備、気づいたら前日までバタバタ」

……たぶん、誰にでも心当たりがあると思います。

特に医学部を目指す現役生の皆さんは、毎日ほんとうにハードです。

朝は学校に行き、放課後は塾や予備校へ移動。
帰宅してからも課題、暗記、復習……。
部活や文化祭、期末テストも重なれば、
一日が24時間じゃ足りないと思うほど忙しい。

正直、そんな生活をこなしているだけでも立派です。

社会人の私たちから見ても、
「移動することなく固定された職場で日々のんべんだらりとルーティンをこなしている大人」よりは、
何倍もエネルギーと気力を使っていると思います。
本当に頭が下がります。

なぜ、ギリギリにならないと動けないのか

実は、これは“怠け癖”ではありません。
心理学的にもちゃんと説明できる現象です。

たとえば「パーキンソンの法則」。
これは、「仕事は、与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。
締切が3日後なら3日分、7日後なら7日分、
その仕事はどんどん“膨らんでいく”のです。

似た考え方に「エメットの法則」もあります。
「ある作業を終えるために必要な時間とエネルギーは、締切直前まで膨張する」――つまり、
やる気も集中力も、締切が近づかないとMAXにならないんです。
そう考えると、「前日になって一気に集中できる」のも当然なんですよね。

でも、本当の原因は“錯覚”だった

行動経済学者のダニエル・カーネマンは、
この現象の根っこに「計画錯誤(Planning Fallacy)」という人間の錯覚があると指摘しています。

私たちは、何かを始めるときに――
「まあ、これくらいの時間で終わるだろう」と
つい楽観的に見積もってしまう。

でも実際には、急な学校の予定、友達からの連絡、
疲労、気分のムラ、想定外の出来事……。
そうした“イレギュラー”が日常的に起こる。
計画には入っていなかった「小さなズレ」が積み重なって、
結果的に締切ギリギリになるのです。

完璧に計画できる人なんていない

「よし、全部を見通して、完璧に計画を立てよう」と思っても、
それこそが“計画錯誤”の落とし穴。
人間は、想定外を想定しきれない生き物です。

だから、現実的な方法はこうです。

本当の締切より前に、自分だけの“マイ締切”を決める。

イレギュラーのために、1〜2日の“空白日”をスケジュールに入れておく。

この2つを意識するだけで、
追い込まれて苦しむ時間をかなり減らせます。

そして、大事なのは「見返すこと」。
どんなに毎日やっていることでも、見返さなければ意外と忘れてしまうものです。
予定を“立てる”より、“振り返る”ほうが、計画を現実に変えてくれます。

要領の良い受験生は、スマホをうまく活用しています。

アプリでスケジュールを管理したり、勉強記録をメモしたり。
スマホが苦手なら、コンビニで100円くらいで売っている小さな手帳でも十分です。

とにかく1日に何度も触れるものでスケジュールを管理すると良いでしょう。

「わかっちゃいるけど、そうなっちゃう」でもいい

人間は完璧じゃありません。
大切なのは、“完璧な計画”ではなく、“柔らかい修正力”。

ギリギリまで頑張る自分を責めるよりも、
「そういう自分の傾向を知っておく」ことが、
次の一歩を軽くしてくれます。

あなたが今日も勉強を続けていること、
それ自体がもう十分に尊い努力です。
どうか、自分を少し褒めてあげてください。
そして、ほんの少しだけ“前倒しの工夫”を取り入れてみましょう。

それだけで、受験生活が少しずつラクになります。